注文住宅を建てるとなると、何かと出費がかさみます。補助金や助成金があるなら活用して、少しでも理想に近い家を建てたいと考える人も多いでしょう。
この記事では、新築注文住宅の補助金助成金制度や税金の優遇措置について、2024年の最新情報をお届けします。補助金や税金の優遇措置を積極的に使って、お得に注文住宅を建てましょう。
【2024年版】国による新築注文住宅が対象となる補助金・助成金
2024年現在、国による新築注文住宅が対象となる補助金・助成金には「子育てエコホーム支援事業」や「給湯省エネ2024事業」などがあります。
誰にでも助成金を出す、というよりは、若い世代向けだったり、子育て世帯向けだったり、「長期優良住宅」や「ZEH住宅」である必要があったりと、何かしらの条件がある点が特徴です。
以下、それぞれの制度について新築の注文住宅に関わる部分を中心に詳しくご紹介していきます。制度の詳しい内容などは、各制度を実施している省庁のホームページを確認してください。
①子育てエコホーム支援事業
子育てエコホーム支援事業は、国土交通省が担当する事業です。エネルギー価格など物価が高騰している今、影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を持つ新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等を支援します。そのことで、子育て世帯・若い夫婦世帯などによる省エネ投資の下支えを行い、2050年のカーボンニュートラルの実現を図る事業です。
注文住宅を新築する場合の条件は以下の通りです。
-
- ・申請時点において、2005年4月2日以降に出生した子を有する世帯か、申請時点において夫婦であり、いずれかが1983年4月2日以降に生まれた世帯
- ・証明書等により、長期優良住宅に該当することが確認できる
- ・証明書等により、ZEH住宅に該当することが確認できる
- ・所有者(購入者)自らが居住する
- ・住戸の床面積が50㎡以上240㎡以下である
- ・土砂災害防止法に基づく、土砂災害特別警戒区域又は災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり防止区域と重複する区域に限る)に原則立地しないもの
- ・都市再生特別措置法第88条第5項の規定により、当該住宅に係る届出をした者が同条第3項の規定による勧告に従わなかった旨の公表がされていないもの
- ・不動産売買契約締結時点において、未完成または完成から1年以内であり、人の居住の用に供したことのないもの
- ・交付申請時、一定以上の出来高の工事完了が確認できる
長期優良住宅とは、一般社団法人住宅性能評価・表示協会によれば次のような物件を指します。
「長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するために、大きく分けて以下のような措置が講じられている住宅を指します。
- 長期に使用するための構造及び設備を有していること
- 居住環境等への配慮を行っていること
- 一定面積以上の住戸面積を有していること
- 維持保全の期間、方法を定めていること
- 自然災害への配慮を行っていること
ZEH(読み方:ぜっち)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」のことです。ZEH住宅は、1年間の消費エネルギーよりも、住宅でつくったエネルギーのほうが多い、または差がゼロになる住宅を指します。「ネット・ゼロ」とは、「正味ゼロ」という意味です。
どちらも環境に配慮された住宅で、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献することが期待されています。
補助金額は長期優良住宅の場合で1戸あたり100万円、ただし、市街化調整区域や土砂災害警戒区域又は浸水想定区域に建てる場合は50万円です。ZEH住宅の場合は1戸あたり80万円、市街化調整区域や土砂災害警戒区域又は浸水想定区域に建てる場合は40万円となります。
申請期間は、交付申請の予約・交付申請期間ともに2024年3月下旬~予算上限に達するまで(遅くとも2024年11月30日まで)です。終了時期が決まっているわけではなく、予算上限に達するまでなので、新築注文住宅を建てることが決まったらすぐに交付申請の予約をすることをおすすめします。
②給湯省エネ2024事業
給湯省エネ2024事業は経済産業省が行っている支援事業です。正式名称を「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」といい、効率のいい給湯器を導入した場合に補助金が出る制度です。
もちろん、新築の注文住宅に給湯省エネ2024事業の対象となる給湯器を取り付けた場合にも対象となります。
導入する高効率給湯器によって補助金の金額は決まっており、1台あたり8万円から18万円の基本額と、給湯器の性能に応じた性能加算額が補助されます 。戸建ての場合には、2台まで補助金の対象となります。
対象となる工事は2023年11月2日以降に着工したもので、交付申請受付期間は2024年3月29日~予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日まで)となっています。こちらも明確な締切があるわけではなく、予算上限に達するまで、なので早めの申請をおすすめします。
③ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業とは、要件を満たす住宅を、ZEHビルダーまたはプランナーとして登録されている施工会社が新築した場合に、ZEH補助金を受け取ることができるという経済産業省・環境省による補助金制度です。「ZEH支援事業」「次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業」「次世代HEMS実証事業」の3事業からなります。
ZEH住宅には、住宅性能に応じてNearly ZEH ・ZEH Oriented・ZEH+・Nearly ZEH+など、さまざまな種類があります。
2023年度は、次の表のような形で補助金が出されていました。
対象の住居 | 金額 | 備考 | |
ZEH支援事業 | ZEH・Nearly ZEH ・ZEH Oriented | 最大55万円 | 設備によって追加の加算額あり |
ZEH+・Nearly ZEH+ | 100万円 | ||
次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業 | ZEH+・Nearly ZEH+ | 100万円 | 蓄電池の設置や燃料電池などの設置でさらに追加の補助金が発生 |
次世代HEMS実証事業 | ZEH+・Nearly ZEH+ | 112万円 | 設備によって追加の加算額あり |
なお、上記情報は2023年度の募集要項に基づくものです。2024年度のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業に関する情報はまだ出ていません。制度の利用を希望する人は、ホームページをチェックしましょう。
④地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業は、資材供給、製材、設計、施工などの連携体制により、地域材を用いて、省エネ性能等に優れた木造住宅(ZEH等)の整備等を行う事業者グループに対して補助金が出ます。
指定された条件に合った事業者グループが申請し採択されると、最大で140万円の補助金が交付されます。施主は間接的に制度の恩恵を受けます。
なお、上記情報は2023年度の実施要項に基づくものです。地域型住宅グリーン化事業は、2024年度は実施されないことが決まっています。ただし、2025年以降の動向はわかりませんので、省エネ性能等に配慮した木造住宅を建てようと考えている方は、公式ホームページをチェックしましょう。
⑤LCCM住宅整備推進事業
LCCM住宅整備推進事業は、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅の脱炭素化を推進するため、先導的な脱炭素化住宅であるLCCM住宅の整備に対して補助を行う事業です。
LCCM住宅とは、ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅の頭文字を取った略称です。LCCM住宅では、建設・運用・廃棄時のCO2排出量を最小限に抑えます。また、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用したり、省エネの設備・設計により、住宅の建築から廃棄までのライフサイクルを通じて、CO2の収支をマイナスにできるのです。さらに、LCCM住宅では「軸組み(柱・基礎・壁など骨組みにあたる部分)」に国産材を使った木造住宅を推奨しています。
このようにLCCM住宅は、ZEH住宅よりもさらに大きく2050年カーボンニュートラルの実現に寄与するものといえます。
2023年度は、基本条件を満たした新築の戸建て住宅を対象に、設計費と建設工事等における補助対象工事の掛かり増し費用の合計額の1/2の金額が補助金として給付されていました。補助限度額は1戸あたり140万円でした。
なお、上記情報は2023年度の実施要項に基づくものです。LCCM住宅推進事業は、2024年度の事業内容はまだ明らかにされていません。制度の利用を希望する人は、ホームページをチェックしましょう。
注文住宅の購入時に使える自治体の補助金・助成金
注文住宅の購入時に使える補助金や助成金を、独自で出している自治体もあります。家を建てる自治体のホームページ等で確認する他、ハウスメーカーの営業担当に相談しても資料をもらえるかもしれません。
ここでは、いくつかの例をご紹介します。
省エネ住宅を対象とする補助金・助成金
省エネ住宅を対象とする補助金の例として、東京都の東京ゼロエミ住宅が挙げられます。
高い断熱性能の断熱材や窓を用いたり、省エネ性能の高い照明やエアコンなどを取り入れた、人にも地球環境にもやさしい都独自の基準を満たした新築の住宅に対して補助金が出ます。
同居や子育てを対象とする支援補助金
埼玉県熊谷市では、親世帯と子世帯が、お互いに支援しあうために市内で同居又は近居し、住宅を新築・購入や増改築した場合に、その費用の一部を熊谷市の地域電子マネー「クマPAY」で最大25万円分まで補助する制度があります。
また、千葉県栄町では、定住・移住を促進するため、長期にわたり居住することを目的に住宅を新築または購入した町民に対して、永続的な暮らしを実現するための奨励金を交付しています。中学生以下の子どもがいる世帯には、加算金も出ます。条件を満たした人がフラット35で住宅ローンを組んだ場合には、最初の5年間金利が安くなる制度もあります。
移住して家を建てる方を対象とする補助金
東京都奥多摩町では、年齢45歳以下の夫婦若しくは子どもがいる世帯、又は35歳以下の人で、奥多摩町に定住する意思のある人が、住宅の新築、増築、改築または購入をした場合に220万円(現金200万円、商品券20万円)を限度額として補助金が出る制度があります。
新築の注文住宅の購入時に適用される税金の優遇措置
新築の注文住宅の購入時に適用される税金の優遇措置にはどのようなものがあるでしょうか。
住宅ローン控除
ひとつめは住宅ローン控除です。控除額が増えるということは、実質的には減税なので、「住宅ローン減税」と呼ばれることもあります。住宅ローン控除は、居住ニーズに応じた住宅を無理のない負担で確保することを促進するための控除です。住宅ローンを借り入れて住宅の新築・取得又は増改築等をした場合、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大で13年間控除する制度です。
住宅ローン控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- ・自己居住用の建物(別荘やセカンドハウスは対象外)の新築・購入・増改築に直接かかった費用であること
- ・原則として金融機関からの借り入れであること
- ・返済期間が10年以上であること
- ・控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること など
2024年の税制改革で、借入れ金の上限が次のように変更になりました。
住宅の種類 | 2023年までに入居 | 2024年に入居 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 |
ただし、借入限度額について、子育て世帯・若者夫婦世帯が2024年に入居する場合には、2024年入居の場合の水準が維持されます。また、新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和する措置についても、建築確認の期限を2023年12月31日から2024年12月31日に延長されます。
住宅ローン控除は、住宅を取得した年の確定申告で住宅ローン控除を申請することで適用となります。2024年中の住宅の取得であれば、確定申告は2025年の2月〜3月です。なお、収入が給与所得のみであれば、2年目以降は年末調整の際に必要書類を提出することで住宅ローン控除が受けられます。
住宅取得資金等の贈与税
父母や祖父母などからの贈与により、自分自身が住むための住宅用家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭を得た場合に、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度があります。
この制度は2022年1月1日から2023年12月31日までの間の期間限定だったのですが、3年間延長され、2026年12月31日まで継続されることとなりました。また、延長に伴い、省エネ等住宅の要件が「断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上であること」から「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」に変更され、非課税額は以下の通りになります。
住宅の種類 | 非課税額上限 |
省エネ等住宅 | 1,000万円 |
それ以外の住宅 | 500万円 |
なお、住宅取得等資金の非課税の特例を利用する場合、非課税額を超えていなくても、贈与税の申告は必要です。確定申告を行い、申告してください。
印紙税
「土地建物売買契約書などの不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるもの」「建物建築工事請負契約書などの建設工事の請負に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が100万円を超えるもの」のうち、2014年4月1日から2027年3月31日までの間に作成されたものについては、印紙税が軽減されます。
印紙税の軽減については特に申告する必要はなく、国税庁のホームページ に制度適用後の値段が載っています。その金額分の収入印紙を貼れば問題ありません。
不動産取得税
「不動産取得税」は住宅など不動産を取得した場合に課税される税金です。不動産の「取得」について課される税金で、固定資産税とは異なり、取得時に1度支払えばその後徴収されることはありません。
建物に対する不動産取得税 = 建物の固定資産税評価額 × 税率4%
土地に対する不動産取得税 = 土地の固定資産税評価額 × 税率4%
上記が不動産取得税の通常の計算方法ですが、建物を住居として取得する場合には、固定資産額評価額から1,200万円(長期優良住宅は1,300万円)が控除され税率を3%に、土地に関しては評価額を1/2にした上で税率を3%にする特例措置が取られています。この特例措置は2024年3月31日で終了予定でしたが、2027年3月31日まで延長されました。
登録免許税
登録免許税とは、不動産・船舶・航空機・会社・人の資格などの登記や、登録・免許・認可に対して課税される税金です。
税額 = 課税標準 × 税率
上記の計算式で算出されます。
課税標準 | 税率(通常) | 税率(軽減特例) | |
新築住居
(長期優良住宅・低炭素住宅) |
法務局認定価格
|
4/1000 | 1/1000 |
新築住居(一般) | 法務局認定価格 | 4/1000 | 1.5/1000 |
土地 | 固定資産税評価額 | 20/1000 | 15/1000 |
税率の軽減特例は2026年3月31日までの期間限定です。
固定資産税
新築住宅の固定資産税が3年間、マンション等の場合には5年間、1/2に減税されます。長期優良住宅の場合には5年間、マンション等の場合には7年間に延長されます。 適用期限は2026年3月31日です。
これは、良質な住宅の建設を促進し、居住水準の向上及び良質な住宅ストックの形成を図ることを目的とした減税です。土砂災害特別警戒区域等の区域内で、都市再生特別措置法に基づく市町村長による適正な立地を促すための勧告に従わずに建設された一定の住宅についてはこの特例措置の適用対象外となります。
新築で注文住宅を建てる際に補助金や減税を利用する場合の注意点
補助金や減税制度を利用して新築の注文住宅を建てる時に注意することにはどのようなことがあるでしょうか。
注意点①申請期間を検討する
まず、申請期間を検討することです。補助金は、申請期間が決まっているものがほとんどです。「まだ申請できると思ったら申請期間が終わっていた」などということのないように、必要書類とともに申請期間も確認しておきましょう。
注意点②予算の上限額を確認する
続いては、予算の上限額を確認することです。子育てエコホーム支援事業や給湯省エネ2024事業のように、「予算の上限に達したら終了します」というタイプの補助金は、予算がどれくらいあるのか、過年度にも同じ補助金があった場合にはいつ頃締め切られているのか調べておくと参考になるでしょう。
また、申請できる条件を満たしたら、すぐに申請の手続きをすることも補助金を得るためには必要です。ハウスメーカーの営業担当には、各種補助金を利用したい旨を伝えておくとよいでしょう。
注意点③確定申告の有無を確認する
減税制度の中には、確定申告が必要なものもあります。住宅ローン控除はそのひとつで、入居した年の確定申告をしないと、控除が受けられません。
また、住宅取得資金等の贈与税も、非課税枠を超えていなくても申請が必要です。確定申告の時期に申請することになりますので、覚えておきましょう。
注意点④新型コロナウイルスによる影響を確認する
新築住宅で利用できる補助金や給付金、そして減税制度には、それぞれ適用要件があります。しかし、世間の状況に応じて、内容や金額が変更されたり適用要件が緩和されたりする可能性、緩和されていたものが元に戻される可能性もあります。
利用を考えている補助金や減税制度は、定期的に最新情報に目を通すようにしましょう。
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補助金を活用してお得に注文住宅を建てよう
ここまで、新築の注文住宅を建てる時に使える補助金や減税制度を見てきました。「子育てエコホーム支援事業」や「給湯省エネ2024事業」、「住宅ローン控除」のように、長期優良住宅やZEH住宅を建てることでよりお得になる補助金制度や減税制度が多いことがわかりました。
こういった制度は、年度によって実施されたりされなかったり、制度の内容が変わったりするので、最新の情報をホームページ等で確認してください。
せっかくなら、使える制度を使って、お得に新築注文住宅を建てましょう。浮いた費用でオプションがつけられたり、憧れの家具が入れられたりするかもしれません。その上長期優良住宅やZEH住宅となれば、断熱性やエネルギー効率もよく、快適な生活が送れそうです。
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