理想通りの家を建てるには、事前の情報収集が欠かせません。その中でも重要な情報のひとつが、「見積もり」です。自分たちの理想を実現させるのにいくらかかるのか、自分たちが決めた予算内でどれくらいのものができるのか、契約前にある程度の姿を見せてくれるのが見積もりです。
この記事では、見積もりを依頼する時のポイントや、見積書の見方についてご紹介します。予算内で最大限に満足できる家を建てるために、ぜひご参考ください。
注文住宅を建てる際に必要な見積もりの種類
注文住宅を建てる際に、見積書は実際にかかる費用を知るための重要な資料となります。また、施工会社を決める上で重要な資料となるのも見積書です。
一口に「見積書」と言っても、「概算見積もり」と「詳細見積もり」があるのをご存知でしょうか。ここでは、それぞれの違いをご紹介します。
概算見積もり
概算見積もりとは、その名の通り、ざっくりとした見積もりのことです。施主が提示した予算や希望する間取り、設備などの情報を基にして、ハウスメーカーや工務店が大まかな費用を予測し、まとめたものです。
どこのハウスメーカー・工務店に施工を依頼するかを決める時の資料になるのも、概算見積もりです。候補となっている複数の会社に同じ条件で概算見積もりを発行してもらうことで、比較検討することができます。
詳細見積もり
詳細見積もりは、「本見積もり」とも言います。実際に施工を依頼するハウスメーカー・工務店に出してもらう見積もりのことです。
概算見積もりの時よりもさらに具体的な住宅の細かいプランが決まった段階で、使用する建材や入れる設備、施工内容の費用などを細かくまとめた見積書になります。詳細な費用の内訳が把握できます。また、実際に契約を交わす場合は、この金額が反映されることになります。概算見積もりよりも内容が細かい分、作成に手間や日数がかかります。
見積もりを作成してもらうまでの流れ
見積書を作成してもらうまでの流れはどのようになっているのでしょうか。
STEP①依頼する業者を選定する
どんなハウスメーカーがあるのか、インターネットで検索をしたり、住宅展示場に見に行ったりして、調べてみましょう。各ハウスメーカー・工務店によって売りにしているものも違えば、家の工法も異なります。各社の特徴を把握した上で、気になる業者をいくつかピックアップしましょう。
「自分たちの要望はあるけれど、どの業者があっているかなんてわからない…」という人には、面談をしてハウスメーカー・工務店を紹介してくれるサービス もあります。
STEP②複数の業者に見積もりを依頼する
気になるハウスメーカー・工務店がピックアップできたら、各社に概算見積もりをお願いしましょう。この時に気をつけることは、同じ条件で概算見積もりを出してもらうことです。会社によって条件を変えてしまうと、概算見積もりの比較の意味がなくなってしまいます。
ハウスメーカー・工務店によっても異なりますが、最初の概算見積もりは無料、そのあとプランを詰めてからの詳細見積もりは有料のところが多いようです。なるべく希望を整理し、具体的な要望を伝えると、より具体的な見積書になり、比較検討がしやすくなります。
また、比較する会社数は多ければ多いほどいいのでは?と思いがちですが、あまり多いと収集がつかなくなってしまいます。3〜4社程度が比較検討しやすく、おすすめです。また、各ハウスメーカー・工務店に相見積もりをとっていることを伝えておくと、不要なトラブルを防げます。
STEP③見積もりを比較検討して業者を決める
概算見積もりが出揃ったら、比較検討してみましょう。意外と業者によって価格や内容が異なっていることに気づくのではないでしょうか。
提示された見積もりの中に何が含まれていて、何が含まれていないのか、確認しましょう。こちらが「必ず入れて欲しい」と依頼したものがきちんと含まれているか、逆に頼んでいないのに勝手に追加されているものはないか、付帯工事費は含まれているのかいないのかなど、会社によって違いがあります。
また、坪単価(総工費を建物の床面積で割ったもの)もひとつの目安になります。ただし、坪単価は延べ床面積で計算する会社もあれば、総施工面積で計算する会社もあります。見積書に載っている坪単価が全て同じ計算式で計算されているとは限りませんので、自分でも計算してみましょう。
最終的には、価格、家の雰囲気、営業担当の印象などを総合して決めることになりますが、やはり価格面は最重要項目となるでしょう。少しでも見積もりに対して疑問に思うことがあれば、気軽に問い合わせてください。問い合わせの際の応対も、どこのハウスメーカー・工務店に依頼するかの判断基準のひとつになります。
関連記事:注文住宅が完成するまでの期間とは?流れも併せて徹底解説!
注文住宅の見積もりに記載されている内容
注文住宅の見積もりには、どんなことが記載されているのでしょうか。
本体工事費
「本体工事費」には、家そのものを作るのにかかる費用が計上されています。坪単価の計算にかかわるのも本体工事費です。
「家そのもの」とは、基礎や構造、断熱、壁、屋根、窓や内装、キッチンやトイレ、浴室などの住宅設備で、下請け工事会社への外注費や職人の人件費も含みます。一般的に、本体工事費は住宅の建築にかかわる費用の約75%程度だと言われています。
別途工事費
「別途工事費」には、本体工事費以外の工事費が入ります。例えば、庭、玄関ポーチ、カーポートなどの外構工事にかかる費用、水道やガスの引き込み、給排水工事などです。また、地盤の改良工事が必要な場合の工事費用や、土地が更地ではなく既存の建物が建っている場合にはその建物の解体費用も含まれます。
地盤改良工事は、必要かどうかが実際に土地をテストしてみないとわかりません。そのため、必要なものとして見積もりに計上している会社、「調査結果による」として見積もりには計上していない会社、まちまちです。しかし、地盤改良工事は必要となると、50万円〜100万円程度かかるため、最初から見積もりに入れておいてもらった方が安心です。
さらに、内装の照明取り付け工事、カーテンレールやカーテンの取り付け、テレビのアンテナ線工事、インターネット回線や電話回線の引き込みなどの工事も別途工事費の中に含まれます。別途工事費は、見積もり総額の20%程度が目安とされています。
諸費用
諸費用とは、事請負契約書印紙代、住宅ローンの諸費用、火災保険料、地震保険料、水道負担金、登記費用、地盤調査費用、建築確認申請費用、不動産取得税、地鎮祭費用(希望する場合)などが含まれます。諸費用は総額の5%〜10%が目安と言われています。
見積もり外の諸経費
「注文住宅を建て、転居する」ということで考えると、見積もりには含まれない諸経費がかかることを忘れてはいけません。転居時に引越し業者を利用するのであれば、その費用がかかりますし、転居をきっかけに家具家電を買い替えるのであれば、その費用も必要です。
そのほかにも、住宅ローンを利用するのであれば、「融資手数料」「ローン保証料」「仲介手数料」「火災保険料」「地震保険料」「団体信用生命保険料」などが初期費用としてかかってきます。住宅ローンの初期費用は新築の戸建てであれば物件購入価格の3%〜7%程度と言われていますが、住宅ローンを利用する銀行によっても異なります。
何にせよ、注文住宅を建てて転居するとなると、何かと物入りです。資金計画には十分すぎるほど十分に余裕を持つことをおすすめします。
注文住宅の見積もりをとる際のポイント
ここでは、注文住宅の見積もりを取る際のポイントをいくつかご紹介します。見積もりはただの書類に見えるかもしれませんが、実はたくさんの大事な情報が詰まっています。
概算見積もりを確認する場合
概算見積もりを確認する場合には、次の点をよく見ましょう。
- ・見積もりに何が含まれているのか
- ・標準仕様には何が含まれているのか
- ・家のサイズとバランスは希望通りか
概算見積もり、特に相見積もりになるとわかっている場合には、少しでも安く見せたいという心理が働き、見積もりに入れなくてもいいものは入れないハウスメーカー・工務店も多いです。しかし、見積もりに入っていなくても最終的には払うお金です。見せかけの安さに惑わされずに、見積もりの金額には何が含まれているのか、そして何が含まれていないのかも、確認しましょう。
また、概算見積もりの段階では、家の仕様は標準仕様になっていることがほとんどです。各ハウスメーカー・工務店の標準仕様がどれくらいのレベルなのか確認しましょう。例えば食洗機や浴室乾燥機は標準でついてくるのか、ついてくるとしたら機種のグレードはどれくらいか、窓の防音性能はどれくらいか、防火防音はどのような仕組みを採用しているのか、などです。標準仕様を確認することによって、自分の希望するものにするにはアップグレードの必要があるのか、あるとしたらどれくらい費用がかかるのかもわかります。
家のサイズとバランスが希望通りかどうかも見ておきましょう。家の建物についても、概算見積もりの段階では要望が全て反映されていることは稀で、「仮プラン」のようなものであることが多いです。実際に希望する家の姿と仮プランの姿が離れていれば離れているほど、詳細見積もりを出した時との差額は大きくなります。
延べ床面積だけでなく、家の形状や屋根の形状が希望通りになっているかなども確認しましょう。
詳細見積もりを確認する場合
詳細見積もりを確認する場合は、次のようなことに着目しましょう。
- ・こちらの要望が全て反映されているか
- ・「一式」表記がある場合、一式には何が含まれるのか
- ・工法や使用する材料など、詳細な記載があるかどうか
まずは、こちらが伝えた要望がきちんと反映されているかどうかを確認しましょう。当たり前に思われるかもしれませんが、意外に反映ミスは多いものです。特に設備などでグレードや様式にこだわりがある場合、また、必要なものはきちんと入っているか、確認しましょう。
次に、「〇〇一式」と書かれていることがあります。この「一式」には何が含まれていて、何が含まれていないのかを確認しましょう。状況によって内容が変わる場合などに概算で見積もりに入れるために「〇〇一式」という表記をしていることが多いのですが、それだけに高額な工事が別で必要になる可能性もあります。いざ契約して実地調査をしたら一気に工事費が跳ね上がったなどということのないよう、きちんと確認しておきましょう。
最後に、家を建てる際の工法や使う資材が何なのかなどが明記されているか確認しましょう。どういった工法で、どういった資材を使って建てるのかがわからなければ、その見積もり金額が妥当なのかどうかもわかりません。また、出来上がる家がどのような雰囲気のものになるのかもわかりません。もし情報が抜けていれば、ハウスメーカー・工務店に問い合わせしてみましょう。
注文住宅の見積もりをとる前に対応しておくこと
ここからは、見積もりを取る前にしておきたいことを4つご紹介します。建てる家のイメージを具体的に膨らませたり、知識を身につけたりすることで、ハウスメーカー・工務店の営業担当の方の言っていることがよく理解できるようになったり、見積もりの内容を点検しやすくなったりします。
条件に優先順位をつける
まず、条件に優先順位をつけておきましょう。
「広いアイランドキッチンが欲しい」「広いパントリーが欲しい」「リビング階段にしたい」「脱衣所と洗面所は分けたい」など、いろいろ要望はあると思います。家族の人数が増えればそれだけ要望の数も増えるはずです。
しかし、全部実現させようとしたら大抵の場合は予算をオーバーしてしまいます。家族みんなの要望を洗い出し、どれを条件として残すか、どれを優先させるかを話し合いましょう。前もって優先順位が決まっていることで、予算オーバーした時に、どれを残すか、どれを削るかの判断がつきやすくなります。
あとでも述べますが、家づくりブログや、生活系InstagramなどといったSNSにも、優先順位づけのヒントは隠されています。参考にしてみてください。
中には部分的に対応しておくとあとが楽なものもあります。例えば「ガスオーブンを導入したい」「ガス乾燥機を設置したい」などの場合、家を建てるときに、必要な箇所にガス栓だけ作っておき、オーブン本体や乾燥機本体は落ち着いてから購入する、ということもできます。落ち着いたタイミングでガス栓工事から始めるより割安で、オーブン代や乾燥機代がかからない分、当面の出費は抑えられます。
同様に、家を建てる時の導入は難しくても、「いつかは…」と思うものがあれば、あとから導入する場合のコストもあわせて検討することをおすすめします。
予算を決めておく
予算の上限を決めておきましょう。
住宅ローンを利用する予定でいる場合は、事前審査を受けることで住宅ローンを利用できるかどうか、いくらくらいまで借りられそうかがわかります。もちろん返済するものですので、借りられるだけ借りていいわけではありませんが、予算の上限を決めるひとつの目安にはなります。
いざ見積もりを目にすると、「少しくらい高くなっても要望が叶う方がいいのではないか」と思ってしまいがちです。しかし、先々かかる出費は住居費だけではありません。住宅ローンが家計を圧迫する事態になっては豊かな生活とは言えません。
予算の上限を決め、オーバーしたら何かを削るという強い意志が必要です。
情報収集しておく
情報収集のためにアンテナを貼っておきましょう。最近は生活系インスタグラマーの方も多く、ルームツアー動画を公開していたり、つけてよかった設備を紹介したりしています。
また、雑誌でも家づくりに関するものが刊行されていますし、インテリア本も多く出版されています。
そういったところから、情報収集しておくと、「これはあると便利」「あれはなくてもなんとかなる」といった判断がつきやすくなります。また、いろいろな家の姿を見ることで、どんな雰囲気にしたい、どんな生活動線が我が家にはあいそうかなど、自分なりの理想像が明確になってきます。
ショールームや展示場に足を運ぶ
メーカーのショールームや住宅展示場がお近くにあれば、足を運んでみましょう。
ショールームには、照明メーカーのショールーム、キッチンメーカーのショールーム、バストイレメーカーのショールーム、タイルメーカーのショールームなど、さまざまなものがあります。ショールームで実物を見ることで、イメージがより具体的なものになります。
最近では、メーカーのホームページでより詳細な写真が見られたり、メーカーによってはオンライン上でショールームを開いているところもあります。ショールームが近くにないという人や、忙しくてなかなか家族揃って見に行くのが難しい人は、活用してみてはいかがでしょうか。
関連記事:注文住宅の相場・費用と損しないための方法を解説【完全保存版】
見積もりはハウスメーカー選びの大きな資料!
ここまで、見積もりについてご紹介してきました。見積もりには、概算見積もりと詳細見積もりがあること、見積もりには多くの情報が詰まっており、メーカー選びに大きな役割を果たすことなどがわかりました。
また、見積もりを作成してもらうに当たっての営業担当の対応や、ショールームでの担当者の対応なども、ハウスメーカー選びの参考になるでしょう。
家づくりは、家が完成したら終わりではありません。金額だけにとらわれるのではなく、総合的に判断してどこに依頼するかを決めることをおすすめします。
この投稿をInstagramで見る