土地なしで注文住宅を建てる流れは?・費用や期間の目安も解説

人生で土地や住宅を購入する機会が何度もあるわけではありません。
とくに注文住宅を建てたいと考えてはいるものの土地をまだ所有していない場合、土地と住宅それぞれの進め方に迷うことも多いでしょう。
簡単に言えば「土地を買って注文住宅を建てる」というだけですが、実はさまざまな手順を踏まなければなりません。

この記事では土地なしから注文住宅を建てる過程を12の手順にそって詳しく解説しています。あわせて、引き渡しまでに代金を支払うタイミングについてや、住宅ローンの注意点などもお伝えします。

理想のマイホームを手に入れるため、注文住宅における土地の取得から引き渡しまでの全体像を把握しておきましょう。

土地なしで注文住宅を建てる手順

まずは、注文住宅を建てる手順を紹介します。

  • ・手順①土地や住宅の予算を決める
  • ・手順②住宅のイメージを考える
  • ・手順③建築会社を選ぶ
  • ・手順④買い付けをする
  • ・手順⑤住宅ローンの事前審査をする
  • ・手順⑥重要事項の説明を受ける
  • ・手順⑦土地の選定・購入をする
  • ・手順⑧建築会社と打ち合わせする
  • ・手順⑨工事請負契約を結ぶ
  • ・手順⑩住宅ローンの本審査をする
  • ・手順⑪着工に移る
  • ・手順⑫施主検査をする

手順①土地や住宅の予算を決める

はじめに住宅にかけられる予算を決めます。
自己資金をどれくらい用意できるのか把握しておきましょう。
予算の構成は、自己資金+住宅ローンです。
頭金をどれくらい支払うかによって、住宅ローンの借入額が変わるためかけられる予算も変わってきます。

住宅ローンの無料診断で無理なく返済できる借入額をシミュレーションするとよいでしょう。年収や自己資金から住宅購入にどれくらいの費用をかけられるのかがわかります。

予算が決まったら、土地購入費用と建築費用に分配します。
地域によって異なりますが、土地が予算の3~4割、建築費用が6割~7割というのが一般的です。

手順②住宅のイメージを考える

どんな家を建てるのか、その家で暮らす家族の人数や年齢などから考えていきます。
必要な土地の広さを把握するためにも、住宅のイメージは早い段階で固めておきましょう。

間取り 部屋数やリビングの広さや水回りなどの生活導線
外観 和モダン・アメリカン・ナチュラル・シンプルモダンなど家のテイスト
内装 壁紙や照明、床材など部屋の雰囲気
構造 木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造など
階数 二階建て平屋、地下室など
性能 耐震性や省エネ、床暖房など設備の性能など

上記のような視点から住みたい家のイメージをあらかじめ決めておくと、効率よく土地探しができるでしょう。

手順③建築会社を選ぶ

  • ・ハウスメーカー
  • ・工務店
  • ・設計事務所

ハウスメーカーは、建材を大量生産することで費用が抑えられる一方、自由度は低くなります。

工務店は、デザインの自由度は高くその土地の特徴をよく理解しています。会社によって規模や品質に違いがみられますが、工務店は地域密着型が多く宣伝費用が必要ないため、費用を抑えられるのが最大のメリットといえるでしょう。

細部にまでこだわりたい人は設計事務所がおすすめです。費用は高くなりますが、唯一無二の家づくりが可能です。
このように、建築会社によって費用やデザインの自由度に差があるため、イメージしている住宅や予算にあわせて選ぶとよいでしょう。

手順④買い付けをする

注文住宅を建てる予算、広さ、建築会社が決まったら実際に住宅を建てる土地を探します。土地の情報は、不動産会社だけでなく建築会社も把握しているため、依頼する建築会社に手伝ってもらうのもよいでしょう。

条件に合う土地が見つかったら買付証明証を提出します。買付証明書とは購入の意思を示す書類で、これを以て詳細な条件や金額について交渉権を得たことになります。
簡単に言うと仮押さえの状態です。この段階では費用は発生しません。また、買付証明書を提出したら必ず購入しなければいけないというわけでもありません。
しかし購入を前提に交渉するため、条件や金額が折り合えば購入するのが原則です。

本当に購入するのかしっかり検討しましょう。

手順⑤住宅ローンの事前審査をする

住宅ローンには事前審査が必要です。土地の見当がついたら、その土地にあわせた建築プランと見積もりを建築会社に提示してもらい金融機関の事前審査に申し込みましょう。
土地なしで注文住宅を建てる場合は、土地の購入費用も含めます。
仮審査にかかる期間は1日~3日です。
この時点で、建築プランを固める必要はありません。金額に大きな差がなければ、金融機関に見積額を提出した後にプランを変更することも可能です。

手順⑥重要事項の説明を受ける

土地を購入する前に重要事項の説明を受けます。
重要事項とは、土地の買主が購入後に不利益を被らないよう、購入金額や土地の面積、周辺環境など土地の情報を詳細にまとめたものです。宅地建物取引士によって書面および口頭でおこなわれます。
売買契約後にこの重要説明事項の記載内容に不満があっても、契約解除ができないためしっかり確認しておきましょう。事前にコピーをもらって目を通しておくと、説明を受ける際に疑問点を確認できます。土地購入に関する不安ごとも、重要事項の説明のときに質問しておくと安心です。

手順⑦土地の選定・購入をする

土地に関する重要事項の説明を受け問題がなければ、売買契約に進みます。
売買契約を結ぶ際に、手付金と中間手数料や印紙代などの諸費用が必要です。一般的に購入額の5~10%を現金でそれぞれ支払います。
手付金は契約が順調に進めば、引き渡し時に土地の購入費用の一部として充てられることが多いため、住宅購入費用全体の予算として考えるとよいでしょう。

ただし、手付金は住宅ローンに組み込めません。諸費用とあわせて自己資金として準備しておきましょう。

手付金を除いた土地の代金は、土地の引き渡しの際に全額支払います。

手順⑧建築会社と打ち合わせする

購入する土地が決まったら、その土地にあわせた具体的なプランを施工を依頼する建築会社と一緒に決めていきましょう。
間取りや設備、内装や外観など、家のつくりから細かい部分まで決めることが山ほどあります。そのため、細部にまでこだわりすぎると打ち合わせに時間がかかり、その分引き渡しまでの期間も伸びてしまいます。

打ち合わせに臨む際には、家づくりにおいて譲れない部分と妥協できる部分をあらかじめまとめておくとよいでしょう。

とはいえ、この打ち合わせで実際に暮らす家が決まります。希望や不安ごとや依頼する建築会社にきちんと伝えましょう。

手順⑨工事請負契約を結ぶ

家づくりのプランが固まったら、施工する建築会社と工事請負契約を結びます。
いわゆる本契約です。

  • ・工事請負契約書
  • ・工事請負契約締結書
  • ・見積書
  • ・設計図書

以上の4つの書類に契約や設計に関する詳細な事柄が記載されます。打ち合わせで決めた内容と書類の記載に間違いがないか確認しましょう。
なお、工事請負契約後に設計プランを変更する場合は、あらたに「変更契約」という契約の締結が必要です。
工事請負契約を締結したら、家を建てる市町村に「建築確認の申請」をおこないます。建築基準法と照らし合わせ、問題がなければ建築確認済証が交付されます。

手順⑩住宅ローンの本審査をする

建築確認済証が交付されたら、住宅ローンの本審査を受けます。
本審査には市町村から交付された建築確認済証、工事請負契約書、土地の売買契約書の写しが必要です。
仮審査後から収入や借入状況、勤務状況に変更があった場合、審査が通らないことがあるため、転職や車の購入などの予定がある場合はタイミングに注意しましょう。
住宅ローンの本審査は通常、1週間~2週間ほどで結果がわかります。

手順⑪着工に移る

住宅ローンの本審査が通れば、正式に着工となります。地鎮祭や上棟式、周辺に住む方々へのあいさつ回りは建築会社がサポートしてもらえることが多いため、希望する場合は相談してみましょう。

注文住宅は、着工から3カ月〜6カ月で引き渡しというのが一般的です。その間、建築途中の家を見ることもできます。現場に通ううちに工事担当者と信頼関係を構築できれば、要望や疑問点を伝えやすくなるため、何度か足を運ぶとよいでしょう。
新居周辺の生活環境の確認にもなります。

手順⑫施主検査をする

家が完成したら、引き渡し前に施主検査をおこないます。施主検査とは完成した家が、設計プラン通りになっているかを確認する作業です。
主に以下のような項目を、建築会社と一緒に確認します。

  • ・扉や窓の取り付け方向や位置
  • ・建具のきしみ
  • ・壁紙・床材の傷
  • ・床のきしみ
  • ・照明の配置
  • ・コンセントの場所
  • ・水回りなどの設備の動作

入居してから不具合を発見した場合、修繕に費用がかかることもあるため、施主検査で不具合を見つけた場合は遠慮なく伝えて、修繕してもらいましょう。

施主検査で問題がなければ、建築会社に費用が支払われ、引き渡し、入居という運びとなります。

土地の探し方

土地なしで注文住宅を検討する際、まずはいい土地がないか探すところからはじまります。
土地探しの方法は主に以下の3つです。

  • ・インターネットを活用して自分で探す
  • ・不動産会社に土地探しを依頼する
  • ・建築会社に土地探しを依頼する

それぞれの特徴やメリットについてみていきましょう。

インターネット

最近では土地を探すとき、まずインターネットで検索して見るという方がほとんどではないでしょうか。

インターネットでの土地探しは、その地域の相場を知るのに最適です。

また、時間を選ばず自分が探したいと思ったタイミングで探せるのもインターネットの土地探しの良いところです。
しかし、更新のタイミングによってはタイムラグが発生するため、掲載されている情報がリアルタイムな情報とは限りません。いいなと思って悩んでいる間にすでに売約済みになっていることもよくあります。
インターネットでの土地探しのコツは、良い条件の土地を見つけたらすぐ問い合わせをすることです。

不動産会社

土地売買の仲介をおこなっている不動産会社に土地探しを依頼する方法もあります。ひとくちに不動産会社といっても土地売買が得意でない場合もあるため、注文住宅用の土地を紹介してもらえるか確認しましょう。

不動産会社のメリットはインターネットに出ていない土地の情報が見れることです。
また、よい土地は、インターネットに掲載される前に買い手が決まることが多いため、直接不動産会社に足を運ぶことをおすすめします。

更地だけでなく、古家付き、建築条件付きなどいろんなタイプの土地の情報をもっているため、選択肢が広がるでしょう。
地域密着型の不動産会社は、その地域でのコネクションを活かし、公開前に情報を提供してもらえることもあるようです。

具体的な予算や入居時期が決まっている場合は、不動産会社での土地探しを検討するのもよいでしょう。

ハウスメーカー・工務店

注文住宅を検討する際、土地探しと建築会社選びは並行して行うと効率的です。

なぜなら、建築会社も土地の情報を持っているため、建築プランを立てつつ、その条件にあう土地を探してくれるからです。しかも、さまざまな施工事例があるため、普通なら敬遠しそうな土地でも地形にあわせたプランを提示してもらえます。
土地探しに家づくりのプロの目が入るので、不動産会社よりもさらに選択肢が広がります。

また、土地の購入と家づくりの窓口が一緒になるため、効率的に家づくりを進められるのもメリットです。

注文住宅が完成する期間の目安

土地なしで注文住宅を購入する場合、引き渡しまでにかかる期間の目安は1年~1年半です。
先ほどの注文住宅を購入する手順にそって、それぞれかかる期間の目安をまとめました。

注文住宅引き渡しまでの流れ 期間の目安
①土地や住宅の予算を決める  

1カ月~2カ月

②住宅のイメージを考える
③建築会社を選ぶ  

3カ月~6カ月

④買い付けをする
⑤住宅ローンの事前審査をする 1日~3日
⑥重要事項の説明を受ける  

1カ月~1カ月半

⑦土地の選定・購入をする
⑧建築会社と打ち合わせする  

2カ月~4カ月

⑨工事請負契約を結ぶ
⑩住宅ローンの本審査をする 1週間~2週間
⑪着工に移る

 

3カ月~6カ月

(着工~完成)

⑫施主検査をする 1カ月

(施主検査~入居まで)

家のつくりや土地の条件、地域や時期によって完成までにかかる期間は変わります。
入居したい時期が決まっている場合は、上の表の期間の目安を参考に、計画的に家づくりを進めましょう。

注文住宅を建てる際のポイント

注文住宅を建てる際、完成までの全体像を把握しておくことが大切です。
ここではその中でも抑えておくべき4つのポイントをお伝えします。
直接自分の生活に大きく影響することでもあるため、しっかりおさえておきましょう。

スケジュールに余裕をもたせる

注文住宅に限らず、家づくりではスケジュールに余裕を持たせておくのが鉄則です。
先ほどお伝えしたように、土地がない状態から注文住宅が完成するまでに、1年~1年半かかります。
しかし、これは一般的な目安で、間取りから使用する材料までじっくり吟味しながら家づくりをしたいという方は建築会社との打ち合わせに目安以上の期間を要します。また、天候不良や、資材不足などによって予定通り工事が進むとも限りません。

工期が遅れてしまうと生活への影響が大きいです。
たとえば、子どもの進学にあわせてスケジュールを組んだ場合、新居から通えないといったことも考えられます。
入居したい日から逆算して2カ月~3カ月の余裕を持たせて、スケジュールを組みましょう。

タイミングごとにかかる費用を把握しておく

住宅ローンは、基本的に建築費用にしか充てることができません。そのため、実際に融資が下りるのは引き渡しのときです。
しかし、土地なしで注文住宅を建てる場合、住宅の引き渡しまでに支払いのタイミングが複数回あるため、資金を準備しておきましょう。
建築会社によっても異なりますが、以下の6つのタイミングで支払いが生じるケースが多いです。

タイミング 内容 費用の目安
土地の契約 手付金/諸費用 それぞれ土地購入代金の5%~10%
土地の引き渡し 残金決済 手付金を除いた残りの土地代金
工事請負契約 契約金 建築費用の10%
工事着工 着工金 建築費用の30%
上棟 中間金 建築費用の30%
住宅の引き渡し 最終金 契約金・着工金・中間金を除いた残りの建築費用

金融機関によっては、土地の購入費用を住宅ローンに含めたり、土地引き渡し時に融資が受けられたりする商品もあるため、支払いの選択肢として事前に相談、確認しておきましょう。

利用できる補助金や減税特例を確かめておく

住宅の購入はとても高価な買い物です。少しでも費用をおさえたい方は、国や自治体の補助金や減税制度について確認しておきましょう。

たとえば、国の政策で脱炭素に向けた省エネ事業で、断熱性能の高い設備や再生可能エネルギー設備に対する補助金が充実しています。地方では、環境保全だけでなく地域の活性化を促すために補助金が設けている自治体も多いため、事前にリサーチしておきましょう。
ただし、補助金を利用するにはさまざまな条件を満たす必要があります。設備の仕様や施主の年齢、家族構成をはじめ、申請期間や事業全体の上限金額が設定されていることもあります。
補助金を利用したい場合は、建築プランや資金計画を立てる際に、担当者へ相談してみましょう。

複数の建築会社を比較する

注文住宅を検討する段階では、複数の建築会社で相見積もりを取ることをおすすめします。
自分の理想の家を作るために、相性の良い建築会社を選ぶためです。それに、1社の見積もりだけだと、その金額が妥当な金額かどうかもわかりません。

複数の建築会社で見積もりをお願いするときは、条件をそろえるために同じ予算と希望を伝えましょう。ほかの建築会社でも見積もりを取っていることも伝えると誠実です。

建築会社によって、提案の内容は違います。たとえば、見積もりプランが標準仕様のみだと、実際にプランを立てる際に追加で費用がかかり、最終的に予算オーバーしてしまうこともあります。
したがって、相見積もりを取り、予算内で自分の希望が実現できそうな建築会社を比較検討しましょう。

住宅ローンの注意点

住宅ローンを利用するうえで注意しなけれないけないのは、融資がおこなわれるのは住宅の引き渡しのときということです。
しかし、土地なしで注文住宅を建てる場合、着工前に土地の代金を支払わなければなりません。そのほかにも、工事の着工金や中間金など、支払いタイミングが複数回あります。
そのため、ある程度まとまった金額を自己資金として準備する必要があります。
とはいえ、土地の購入費用を一括で支払い、さらに工事着手金や中間金を準備する負担は大きいです。
そこで、住宅ローンが利用できるまでの間のつなぎとして土地の購入費用などを融資してもらえる「つなぎ融資」を利用するのもよいでしょう。

つなぎ融資

つなぎ融資とは、注文住宅が完成し、住宅ローンが融資されるまでにかかる費用を支払うための融資です。自己資金がなくても完成までにかかる費用をまかなえます。
しかし、つなぎ融資は土地や住宅という担保がないため、金利は高めです。
つなぎ融資は住宅ローンと別の金融機関で契約することはできません。つなぎ融資は住宅ローンを利用する前提で融資がおこなわれるからです。
つなぎ融資はやっていない金融機関もあるため、利用したい場合は、住宅ローン会社を選ぶ際に確認しておきましょう。
金融機関によっては住宅ローンの分割融資という方法もあります。土地の購入、工事の着手金、中間金など必要なタイミングで融資してもらえるため、自己資金に不安がある方は検討してみましょう。

注文住宅は完成まで約1年半!余裕を持った計画を

この記事では、土地なしで注文住宅を建てる際の流れを手順を12に分けてお伝えしました。

土地なしで注文住宅を建てる場合、土地探しと建築会社選びは同時におこなうと効率的です。また、住宅ローンを利用する際、基本的に注文住宅が完成し、施主に引き渡されるまで融資はおりません。実際に住宅が施主に引き渡しまでの間に何度か支払いのタイミングがあることは覚えておきましょう。
注文住宅は完成までに1年半ほどかかります。その間、想定外のトラブルに備え、スケジュールと費用に余裕を持たせておくことが大切です。

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カテゴリー: 住宅について, 土地について パーマリンク

監修者

池田 恵子

ファミリア株式会社 取締役

略歴

  • アトリエファイ建築研究所
    (建設・現場監理に従事。)
  • 池田林業株式会社
    (設計・現場監理に従事。後に取締役に就任し現在に至る。)

資格