土地からこだわることができ、間取りやデザインを希望通りにできる注文住宅。家庭を持つと、購入を検討する方も多いのではないでしょうか。
注文住宅の購入を検討する際に、気になるのが頭金です。注文住宅を建てるなら、どのくらいの頭金が必要になるのでしょうか。
本記事では、頭金を支払うメリットや注文住宅の頭金の相場、頭金の額を決める際のポイントについて解説します。また、家の購入について悩んでいる方に向けて、家を早く購入するメリットをお伝えします。
頭金とは
頭金とは、ローンの一部を先払いし、ローンの総額を減らすために使われるお金のことです。たとえば、4,000万円の家なら、1,000万円を頭金として支払えば、残りの3,000万円で住宅ローンを組んで購入することができます。
必ずしも頭金が必要というわけではありません。頭金を支払うことで手元に残る資金が少なくなり、急な出費などに対応できなくなるようなら、支払わなくても大丈夫です。
以前は住宅ローンの融資限度額が住宅価格の8割〜9割でしたが、近年では全額を融資する金融機関も少なくありません。しかし頭金を支払っておくほうが、住宅ローンの審査や返済において有利に働きます。
注文住宅の購入時に頭金以外にかかる費用
注文住宅を建てるときに必要なのは、頭金だけではありません。頭金以外に必要な費用を知らずに住宅を購入してしまうと、想定よりも出費がかさんでしまう可能性があるため注意が必要です。
住宅を購入するときに見落としがちな、頭金以外の費用について解説します。
印紙代
注文住宅を建てる際、頭金以外に「印紙代」がかかる場合がほとんどです。
印紙代とは、法律で定められた「課税文書」に対して支払う税金のことです。不動産売買契約書や住宅ローン契約書、注文住宅の建築契約書などは、すべて印紙代の対象となります。
売買代金や融資金額など契約書に記載された金額によって、印紙代は異なります。
契約書に記載された金額 | 印紙代 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 10,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 20,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 60,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 100,000円 |
なお、不動産の売買契約と建築工事請負契約について、2020年3月31日までに取り交わされる契約書の場合、以下のとおり印紙代の軽減措置が設けられています。
契約書に記載された金額 | 印紙代 |
100万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 60,000円 |
印紙代は、収入印紙を購入し、契約書に貼り付けて消印することで納めます。もし、収入印紙を適切に貼らなかったり、消印をしなかったりすると、印紙税未納とみなされ、過怠税を課せられることがあります。
印紙代が未納の場合、刑罰が科されることもあるため、注意しましょう。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産業者が土地の購入や売買契約を仲介する際に支払う手数料のことです。仲介手数料は、不動産の売買価格によって決まり、上限が法律で定められています。
例えば、不動産価格が400万円を超える場合、仲介手数料は売買価格の3%に6万円を加えた金額までとされています。
一方で下限は決められていないため、交渉次第では値下げできる場合があります。ただし、不動産業者との付き合いが長期にわたることも多いため、無理な交渉で関係を悪化させないように注意が必要です。
登記費用
注文住宅を建てる際、頭金以外にかかる費用のひとつに「登記費用」があります。登記とは、不動産の所有権や抵当権といった法律上の権利を公的に記録するための手続きのことです。登記を行うことで、第三者に対して自分がその不動産の所有者であることを証明できます。
登記の手続きは複雑なため、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。登記費用として、手数料や登録免許税を含めて30万円から50万円ほど用意しておく必要があるでしょう。
火災・地震保険料
火災保険は、火災だけでなく落雷、風災、雪災、破損、盗難など、さまざまな災害や事故に対して住宅を守る保険です。特に、住宅ローンを利用する際は火災保険への加入が条件となる場合がほとんどです。
一方、地震保険は地震や津波による被害を補償するもので、火災保険だけではカバーできない損害に備えます。地震保険は国と保険会社が共同運営しているため、どの保険会社を利用しても保険料は同じですが、建物の耐震性能によっては割引されることがあります。地震保険は多くの場合、火災保険とセットで加入しなければなりません。特に地震の多い地域では加入が強く推奨されます。
固定資産税などの清算金
注文住宅を購入する際、頭金以外にかかる費用のひとつに「固定資産税などの清算金」があります。固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税されますが、土地や建物の売買が行われた年には、売主と買主でこの税金を公平に分担する必要があります。これが「固定資産税清算金」です。
法的拘束力はないものの、契約上の重要な取り決めであり、もし支払いが滞れば契約違反となることもあるため、注意が必要です。
不動産取得税
「不動産取得税」は、毎年課される固定資産税とは異なり、土地や建物を取得したときにのみ支払う税金のことです。都道府県が課税する地方税であり、納付は不動産取得後、自治体から発行される納税通知書に基づいて行われます。
不動産取得税の金額は、固定資産税評価額を不動産価格として「不動産の価格×税率」で計算されます。また、建物の延床面積などいくつかの条件を満たせば、軽減措置を受けられます。
住宅ローン借り入れに関する費用
住宅ローンを借り入れるときには、「手数料」や「保証料」などの費用がかかります。金融機関に支払う「融資手数料」は、3〜5万円程度が相場です。ただし、低金利の住宅ローンでは融資額の2.2%など、割合で設定されていることもあるため、事前に確認が必要です。
また、ローンの返済が難しくなった場合に保証会社が金融機関に代わって返済を行うための費用として、「ローン保証料」を支払わなければなりません。保証料は借入額に応じて異なり、1,000万円の借入で約20万円が一般的です。
頭金を支払うメリット
頭金を支払うと、住宅ローンの借入時や返済時においてさまざまなメリットがあります。ここからは、頭金を支払うメリットについて解説します。
住宅ローン・金利の負担を減らせる
頭金を支払うことで住宅ローンの借入金額が減少します。その結果、毎月のローン返済額を抑えられるため、家計への負担を減らすことができます。また、借入金に対する利息の総額を抑えられるのも大きなメリットです。
さらに、頭金を多く支払うことで、金融機関から金利優遇を受けられる場合があります。たとえば、住宅金融支援機構の「フラット35」では、一定の頭金を入れることで、通常よりも低い金利が適用されることがあります。
住宅ローンの返済期間を短縮できる
頭金を支払うメリットの一つに、住宅ローンの返済期間を短縮できることがあげられます。頭金を支払い住宅ローンの借入額を抑えることで、その分返済期間を短く設定できます。仮に返済期間を短く設定しなくても、毎月の返済額を抑えられ、余裕のある資金を「繰上返済」に回しやすくなるため、ローンの返済期間を短縮しやすくなります。
住宅ローンの審査に通りやすくなる
住宅ローンの審査に通りやすくなることも、頭金を支払うメリットの一つです。金融機関はローン審査の際、申込者の年収や資産状況などから返済能力を評価します。頭金を用意することで借入額が減少し、月々の返済負担も軽くなるため、返済能力が高いと判断されやすくなるでしょう。
また、頭金を準備できること自体が、金融機関からの信頼ポイントにつながります。頭金を用意できるということは、将来的にも安定した返済が期待できるという印象を与えるため、審査がスムーズに進む可能性が高まります。
注文住宅の頭金の相場
「2023年度フラット35利用者調査」によると、注文住宅(建物のみ)・注文住宅(土地を含む)の頭金の平均データは以下のとおりです。
注文住宅(建物のみ) | 注文住宅(土地を含む) | |
頭金(手持金)(万円) | 699.0 | 473.8 |
融資金(万円) | 3,040.1 | 4,171.2 |
年齢(歳) | 48.0 | 40.8 |
世帯年収(万円) | 629.1 | 704.1 |
本データから、総費用の1割〜2割程度の頭金を用意しているケースが多いことがわかります。金額にすると、300万円〜600万円必要と想定しておくとよいでしょう。
頭金の額を決める際のポイント
具体的な頭金の額をどのように決めればよいか疑問を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。頭金を決める際のポイントについて解説します。
住宅を購入する時期から考える
頭金の額を決めるときは、住宅を購入する時期から考えるのがおすすめです。たとえば、「5年後に家を購入する」と目標時期を設定し、そのために毎月や毎年どれだけの貯蓄が必要かを計算します。そうすると、貯蓄の目標額だけでなくその期限も明確になり、無理のない計画が立てやすくなります。また、具体的なゴールを設定できると、貯蓄のモチベーションを維持しやすくなり、節約や稼ぎを増やすことに注力しやすくなるでしょう。
貯蓄できそうな金額を計算する
頭金の額を決める際、毎月貯蓄できそうな金額を計算する方法も効果的です。具体的には、毎月の収入やボーナスからどのくらい貯蓄に回せるかを考えます。日常生活の中で節約できる部分がないかを見直して、貯蓄額を増やすための工夫をするのもよいでしょう。
毎月どの程度貯められるかを把握することで、何年後にどの程度の頭金を準備できるかを予測しやすくなります。計画的に貯蓄を進められるため、無理のない範囲で目標額を設定できるのがこの方法のメリットです。
現在の貯蓄額から計算する
家計管理ができていて十分に貯蓄がある場合は、現在の貯蓄から頭金の額を決めるのもよいでしょう。ただし、いくら貯金があるからと言って、貯金を全額頭金にするのは危険です。病気や事故などで収入が途絶えた場合など「もしも」を想定して、給与の3か月〜6か月分は生活予備費として残しておくのがポイントです。
住宅ローンの融資の限度額を確認する
住宅ローンの融資限度額は、年収倍率や返済負担率、融資率に加えて、年収や勤務年数などによって異なります。融資限度額が住宅の購入金額を下回る場合、不足分を頭金として補わなければなりません。頭金が足りない場合には、住宅の購入費用を抑える必要があります。
家を早く購入するメリット
頭金を用意できないからと悩むのであれば、早めに購入したほうがトータル安く済む場合があります。
最近では頭金ゼロでも住宅ローンを受けられるケースも増えています。頭金ゼロでは返済額が増えてしまいますが、繰り上げ返済を利用すれば、頭金を貯めるよりも有利になる場合も。
そのほかにも、家を早く購入するメリットについて見ていきましょう。
快適な新居で長く暮らせる
家を早く購入すれば、快適な新居で長く暮らせます。特に結婚や出産など家族構成やライフプランが変わったときは、家を購入する良いタイミングです。広くきれいな家で長期間過ごせることで生活の質が向上するでしょう。
またマイホームを手に入れることで、子どもはもちろん、親自身も近所付き合いや地域社会との繋がりを深めやすくなり、より充実した生活を送ることができるでしょう。
返済が早く終わる
家を早く購入すればローンの返済が早く終わるため、固定費の一つである住居費を節約でき、余裕のある老後生活を送れます。老後は収入が現役時代に比べて大幅に減少し、主な収入源は年金になる場合がほとんどです。そのため、ローン返済が残っていると老後の生活が厳しくなる可能性があります。
しかし、早く家を購入し、計画的に返済を進めていけば、老後にローンの負担がない状態で安心して暮らせるでしょう。
現在の低水準の金利で住宅ローンを組める
現在の低水準の金利で住宅ローンを組めるのは、早く家を購入するメリットの一つです。現在の住宅ローンの金利は歴史的に低い水準にあり、このタイミングでローンを組むことで、月々の支払い額を大幅に抑えられます。金利が低いと、借入額に対する利息が少なく済むため、総返済額も軽減されるからです。
住宅ローンの金利は日本銀行の政策金利や経済状況に影響されるため、将来的に上昇する可能性があります。そのため、今の低金利のうちに住宅ローンを組んでおくことをおすすめします。
頭金ゼロでも注文住宅を建てられるが、あった方が良い
頭金ゼロでも注文住宅を建てられますが、住宅ローン借入時の審査に通りやすくなったり、住宅ローンの金利を減らせたりするため、頭金はできるだけ支払う方がよいでしょう。頭金の相場として、総費用の1割〜2割程度、金額にすると300万円〜600万円を用意するのが一般的です。
ただし、頭金を用意できないからと悩むようなら早めに購入したほうが良いケースもあります。たとえば、頭金ゼロで購入しても、繰り上げ返済を利用すればトータルでは安く済む場合も。
家計の状況や自分の年齢・収入などを考慮し、資金計画をしっかり立てたうえで、注文住宅の購入を検討しましょう。