住宅を購入する際、多くの人が住宅ローンを利用します。
注文住宅は間取りや内装などを好きなように設計できるという魅力がある一方で、契約から入居までに時間がかかり、住宅ローンを利用する流れがわかりづらいと感じる人も多いです。
この記事では、注文住宅で住宅ローンを利用する際の流れをわかりやすく解説します。
これから住居の購入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
住宅ローンが融資されるまでの流れ
住宅の購入を検討し始めてから住宅ローンが融資されるまで、すなわち住宅ローンを使った住宅購入の手続きが終わるまでの流れは次の通りです。
土地や住宅の予算を決める
まず、土地や住宅の予算を決めます。
土地の候補を探し、ハウスメーカーに建築プランの見積もりを依頼します。土地代と建物を建てるための建築費および諸費用の概算を見積もり、そこから自己資金を引いた金額が借入希望額を決定します。
借入希望額を決める上で考慮したいのが返済比率です。
収入に対して住宅ローンを含む全てのローンの返済額が占める割合を返済比率といいます。返済比率は「年間のローン返済額÷額面年収×100」の計算式で求めることができます。多くの金融機関で審査基準の返済比率は30%から35%となっています。
また、30%から35%はあくまでも上限であり、ゆとりを持って返済できる返済比率は20%から25%程度といわれています。
自己資金がどれくらい用意できるかによっても予算は変わりますが、ひとつの目安として考えておくとよいでしょう。
仮審査を申し込む
借入希望額が決まったら、仮審査を申し込みます。事前審査と呼ぶこともあります。
施主が住宅ローンを組んだとして、きちんと返済していけるかどうかを年収や債務の状況、希望借入額などから判断します。仮審査の結果は早い場合は数日、かかっても1週間程度でわかります。
住宅会社と計画を立てる
仮審査に無事通ったら、住宅会社と具体的な建てる家についてのプランを練っていきます。
仮審査を申し込んだあとで具体的にプランを作り込んでいくことで、本審査が通らず大幅なプラン変更を迫られるリスクを軽減できます。
本審査を申し込む
注文住宅の仕様や金額が決まったら、本審査に入ります。正式審査と呼ぶこともあります。
本審査のタイミングは契約書が必要となるため、工務店やハウスメーカーと契約を結んだ直後が一般的です。
つなぎ融資や分割融資を利用する
注文住宅を建てる上で大きな支払いをするのは以下のタイミングです。
- ・土地の手付金
- ・土地の残金
- ・建物工事の手付金
- ・建物工事の着手金
- ・建物工事の中間金
- ・建物工事の残金
住宅ローンは引き渡しの時に融資が実行されます。そのため、住宅ローンで借りたお金が使えるのは建物工事の残金を支払うタイミングになります。それ以外の支払いでローンを使いたい場合は、つなぎ融資や分割融資を利用することになります。
つなぎ融資とは住宅の引き渡し前に必要な資金を一時的に立て替えるためのローンです。つなぎ融資で借りたお金は、住宅ローンの融資が実行された時に全額返済されます。
分割融資とは、まとまった金額の資金が必要なときに、必要な額を複数回にわけて融資を実行する方法です。
つなぎ融資や分割融資が利用できるかどうかは金融機関によって異なります。利用を検討するのなら、対応しているか事前に確認しておきましょう。
引き渡しの際に住宅ローンの融資が始まる
引き渡しのタイミングで住宅ローンの融資が実行されます。
返済がいつから始まるかは、利用する金融機関や住宅ローンのプランによって異なります。住宅ローンの返済開始日の基準となる「約定返済日」が各金融機関で違うためです。ご利用の住宅ローンでいつから返済が始まるのか事前に確認しておきましょう。
金利決定のタイミングには「申込時の金利が適用」の場合と、「融資実行時の金利が適用される場合」の2パターンがあります。実行時金利の場合は、返済開始日の違いによって、支払う利息が大きく変わるので注意が必要です。
注文住宅の住宅ローンの組み方
土地と完成した建物をセットで購入する建売住宅と異なり、注文住宅では基本的に土地を先に購入したあとで、建物を建てていきます。そのため、注文住宅ならではのローンの組み方が数パターンあります。
基本的にどのパターンも、ローンの対象となるものの引き渡し時に融資が実行されます。引き渡しよりも前に資金を借りたい場合には、つなぎ融資か分割融資を利用することになります。
建物だけでローンを組む
土地にはローンを使わず、建物だけでローンを組む方法です。
すでに所有している土地に建てる場合や、建て替えの場合、土地は現金一括で買う場合がこれに当たり、住宅の引き渡し時に融資が実行されます。
建物だけでローンを組む場合のメリットは以下の通りです。
- ・ローンを組む金額が少なくて済む
一方のデメリットは以下の通りです。
- ・ローンを組める金額も少なくなる恐れがある
土地代と建築費用を1つにまとめてローンを組む
土地・建物の購入費用が自己資金だけではまかなえない場合、土地の購入代金と建築費を住宅ローンで支払うことになります。
この場合も住宅の引き渡し時に融資が行われるので、土地の購入費用を借りたい場合はつなぎ融資や分割融資を利用することになります。
土地代と建築費用を1つにまとめてローンを組む場合のメリットは以下のような点です。
- ・申し込み手続きがわかりやすい
- ・住宅に関するローンの支払いが一本化できる
- ・諸費用の金額を抑えることができる
一方、デメリットには次のようなことが挙げられます。
- ・土地代は一旦全額自己資金でまかなう必要がある
土地と建物の2本立てでローンを組む
土地・建物の購入費用が自己資金だけではまかなえない場合に、土地は土地の住宅ローン、建物は建物の住宅ローンを組む形です。「二本立て」と呼んだり、「土地先行融資」と呼んだりします。
土地の住宅ローンは土地の引き渡し時に、建物の住宅ローンは住宅の引き渡し時に融資されます。
土地と建物の2本立てでローンを組む場合のメリットは以下の通りです。
- ・土地の購入費用を土地購入時に借りることができる
- ・自己資金の総額が少なくて済む
- ・条件次第では、土地の購入費用にも住宅ローン控除が使える
デメリットには次のようなものが挙げられます。
- ・ローンの返済が土地の引き渡し時から始まる
- ・支払いの総額が高くなる
住宅ローンの金利の種類
住宅ローンは借りる金額も大きいので、金利の支払い金額も大きくなりがちです。では、住宅ローンの金利の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。
全期間固定型
借入時の金利が返済開始から終了まで固定されているものが「全期間固定金利」です。
借入期間中の金利が変わらないため、毎回の返済額や総返済額が借り入れた時点で確定します。全期間固定型の金利は3種類のタイプの中で一番高いです。
全期間固定金利の商品の代表的なものに、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供しているフラット35が挙げられます。
変動金利型
変動金利型とは、借入期間中に適用される金利が変動するタイプの住宅ローンです。
変動金利型の金利は3タイプの中では一番低く設定されています。
借入後は半年に一度適用金利の見直しが行われるケースが多いですが、たとえ適用金利が変動したとしても、月々の返済額は5年間変わらないのが一般的です。
5年後の返済額は、その時点の元金残高、金利、残りの返済期間を元に再計算されて決まります。見直し後の返済額は、適用金利が大幅に上昇した場合でも直前の返済額の最大1.25倍までという激変緩和措置があるので、見直し後の返済負担が大幅に増えることはありません。
期間選択固定金利型
借入当初から一定期間の金利が固定されるタイプです。金利水準は、変動金利型と全期間固定金利型の中間です。
選択肢の種類は金融機関によって異なるものの、「3年固定」「5年固定」「7年固定」「10年固定」「15年固定」「20年固定」など、複数の固定金利期間から選べるようになっています。
固定金利期間が終悪と、変動金利型になるのが一般的ですが、再度固定金利選択型を選ぶこともできます。ただし、固定金利期間が終了したあとの金利は、その時の市場金利に応じて見直されるので、これまでと同じとは限りません。
住宅ローンで支払えない費用
注文住宅を建てる上で、住宅ローンでは支払えない費用がいくつかあるのをご存知ですか。
ここでご紹介する費用は、住宅ローンでは払えないので自己資金から出す必要があります。このことを知らず住宅ローンの頭金に自己資金を当ててしまうと、必要な費用が支払えないということになりかねません。
頭金は、余裕を持った金額にしておきましょう。
仲介手数料
土地の購入にも仲介手数料は必要です。仲介手数料の上限金額は、「物件価格の3%+6万円」で求めた金額に消費税を加えたものです。
売買契約締結時に手数料の半額を、物件の引渡し時に残りを支払うのが一般的です。
こういった諸費用を住宅ローンに組み込めるかどうかは金融機関によって異なります。また、組み込めた場合でも、支払いのタイミングは融資の実行より前になるので、一旦は自己資金から払うことになります。
なお、不動産会社が売主の場合、売主から直接土地を買う場合には、仲介手数料は発生しません。
司法書士・土地家屋調査士の費用
新たに土地を取得したり、戸建てを新築したりする時には所有権移転登記が、住宅ローンを使う場合には抵当権設定登記が必要です。これらの登記は司法書士に依頼するのが一般的です。
また、建物の建物表題登記も必要になります。建物表題登記は土地家屋調査士に依頼します。
その際、謝礼を支払いますが、その費用が住宅ローンに組み込めるかどうかは商品によって異なります。また、こちらも引き渡し前に費用が発生するので、仮に組み込めても一旦は自己資金から支払う必要があります。
計測・地盤調査に関する費用
どんな土地でも家が建てられるわけではありません。敷地調査や地盤調査をして本当に家を建てても大丈夫な土地なのかを確認して初めて家が建てられます。
敷地調査とは、主に建築基準法や都市計画法といった「法律」と建築予定地を照らし合わせる調査です。
地盤調査とは、住宅を建てる土地の強度を測るための調査のことです。建設する住宅の重量に耐え得るのか、沈下に抵抗する力があるのかを確認します。
これらは建築前に行うものですので、支払いのタイミングも融資実行前になります。計測・調査に関する費用を諸費用として住宅ローンに組み込む場合でも、自己資金から建て替える必要があります。
金融機関へ支払う各種手数料
金融機関へ支払う各種手数料は、基本的に現金で支払うものです。商品によっては諸費用として住宅ローンに組み込むことができる場合もありますが、あくまでも住宅ローンの融資が実行されるのは物件の引き渡し時です。そのため、一旦自己資金から支払う必要があります。
水道加入代
水道加入代とは、安全で安定した水道水の供給が行えるよう、水道施設の拡充整備などに充てるとともに、現在水道を使用している人との負担の公平を図る目的で、給水装置を新たに設置または増径する場合に自治体の水道局に支払うものです。
住宅の新築は給水装置の新たな設置にあたるので、水道加入代の支払いが必要になります。建て替えの時は必要ありません。以前家が建っていた土地では、前の家の持ち主が支払っていて支払いの必要がないケースもあります。
工事代金に水道加入代が含まれている場合もあるので、ハウスメーカーや工務店に確認してみましょう。含まれていない場合には、施工店が水道局に給水装置工事の申請手続きをし、着工するころに施主が水道局に水道分担金を支払うことになるでしょう。
支払う場合には着工のタイミングでの支払いになるので、自己資金から支払うことになります。
建築確認申請費用
住宅を建てるときには、建築確認と呼ばれる検査を受ける必要があります。住宅の着工前に施工会社などを通じて、建築確認申請を行い、問題がなければ「建築確認済証」が送られてくるので、保管します。
工事が完了したら完了検査を行い、問題がなければ、「検査済証」が発行されるのでこれもきちんと保管しましょう。
これらの申請には手数料がかかりますが、手数料を諸費用の一部として住宅ローンに組み込む場合でも、支払いのタイミングの関係上一旦は自己資金から支払う必要があります。
家具や家電の購入に関する費用
家具や家電の購入に関する費用は、諸費用の除外に指定されていることが多いです。基本的に住宅ローンに組み込めないと考えてください。ただし、作り付けの家具の場合は、家の購入費用に含まれるので、住宅ローンの中に組み込まれます。
最近では家具や家電の購入に関する費用を住宅ローンの中に組み込める商品も出てきていますが、購入の期限が定められており、領収書の提出が必要であることから、あまり使い勝手がいいとは言えません。
引っ越し費用
引越し費用も基本的には含まれないと考えてよいでしょう。
ただし、引越し費用も含めることができる住宅ローン商品が少しずつ出てきています。その他の条件と照らし合わせて検討するのもよいでしょう。
仮住まいの家賃
建て替えなどで、一時的に賃貸住宅を借りる場合の家賃も住宅ローンには含まれません。
自己資金から出す必要があるので、その分を考えた頭金の設定にしましょう。
住宅ローンを組む際の注意点
住宅ローンを組む際にはどのような点に注意すればよいでしょうか。
金融機関ごとの違いを調べる
審査基準や融資のタイミングは金融機関ごとに異なるので、それぞれの商品やオプションを比較しながら選ぶのが大切です。
金融機関は住宅会社と提携している金融機関の提携ローンを利用しても、自分で探しても大丈夫です。ネット銀行の方が金利が安い傾向にあります。
金利の変動に注意する
金利は絶えず変動しています。金利の変動は金融政策などが大きく関係します。
日銀は2024年3月に開催した金融政策決定会合で「マイナス金利政策」を解除し、17年ぶりに利上げを実施しました。さらに2024年7月末には、それまで続けてきた長期国債の買い入れを減額するとともに、短期金利の誘導目標が0から0.1%程度だったものを0.25%程度に引き上げることを決めています。
これを受けて、住宅ローンの金利も上がるのではないかと言われています。住宅ローンの利用を考えるのであれば、金利の動向には常に目を光らせておきましょう。
住宅ローン減税の適用条件に注意する
住宅ローン減税の適用条件が、2024年1月に変更されました。
省エネ基準を満たさない住宅は住宅ローン減税の対象外となり、住宅ローン減税を受ける際は、省エネ基準住宅である証明書を設計者や施工者から取得する必要があります。
このように、住宅ローン減税の適用条件は変更される可能性があるので、常に最新の情報を確認するようにしましょう。
プロの意見を聞く
住宅ローンの組み方には工夫と専門的な知識が必要となります。ハウスメーカーや工務店の担当者の意見を参考にするのはもちろん、ファイナンシャルプランナーなどプロの力を借りることも検討しましょう。
適切にローンを活用し注文住宅を手に入れよう
注文住宅で住宅ローンを利用する際の流れや住宅ローンの種類、住宅ローンで払えない費用などについて解説してきました。
住宅ローンを活用した注文住宅購入のイメージが具体的になったのではないでしょうか。
つくば市周辺で注文住宅をお考えでしたらぜひファミリアにご相談ください。豊富な知識と経験で、きっとお役に立てるはずです。